虚言ネットワーク

※このブログはフィクションです

駆け抜けて日常 #9

別れは突然やってくる。

「久しぶり。元気かい?俺、地元で就職することにしたわ。」

東京で出会った友達は散り散りになっていく。ある友人は田舎の山村での生活を選んだ。またある友人は周囲の反対を押し切り、海外へ。皆の気持ちを受け止め切れるほど東京は広くないらしい。

「そういえば、シソンヌの単独DVD買った?」

「大豆田とわ子と三人の元夫の角ちゃん、めちゃくちゃ良いよね。伊藤沙莉のナレーションも良い。」

友人とのくだらない話をチャットでやりとりすることが当たり前になってしまった。大人になっても夜中にファミレスに集まってそんな話をし続けているような、そんな大人になっていると思っていた。ご時世なのか、単にそんな大人にはなれなかったのか。答えは判らないが、真っ当な人間になれないような予感は正直どこかにあったような気がする。何が真っ当で何が真っ当ではないか…そんなことはどうでもいい。

「地元に帰ったら、もうみんなとはしばらく会えないだろうからさ…」

そんなことないよ、また集まろう…とは言えなかった。もしかすると、今後会わないまま死んでいくという未来の方がよっぽどリアルな気がしてならなかったからかもしれない。月日の中で忘れ去ってしまった人々が、私には沢山いるのかもしれない。

「人は、二回死ぬんです。実態がなくなってから、皆んなに思い出してもらえなくなった日が二度目の命日です。」

中学校の担任が黒板を背にして言った言葉。少し埃っぽい言葉かもしれないが、友人とやりとりをしながら見つめる画面の奥に、屍が積み上げられた…そんな景色を呼び起こしたのには、先生の影があったからかもしれない。

さようなら、死なないでおくれよ。