虚言ネットワーク

※このブログはフィクションです

駆け抜けて日常 #10

相談を持ち掛けてくる相手は、話しかけている相手のことを見えているのかどうか。

「どうやって別れたの?」

彼女に別れを切り出そうとする友人からの相談。なぜ私に?ああ、最近(そんな最近でもないけどな…)別れた知人に該当したのが私だったって、それだけのことか。

「そんなもんさ、自分の思ったことをちゃんと伝えてあげればいいでしょうよ。」

「多分だけど、相手はもう少し真剣に話し合いたいと思っているんじゃないの?」

自分が出来なかった…今もできるか分からないようなことを今の彼にならドンドン言えてしまう自分が末恐ろしい。多分だが、最良の判断を人は求めてしまうわけで…その判断に付き纏う責任を何かしらと、誰かしらと分け合いたいという気持ちが働くのかもしれない。彼の見据える未来に彼女も僕も今は見えていないのだと思う。

「まあ、なんとか別れを切り出してみるよ。彼女の家にあった荷物ってどうやって持ち帰ったの?」

人というヤツは…まったく。

世を偲ぶ化け物同士は、日陰でひっそり手を繋いで生きていくしかないのかもしれない。そんな彼の手にはじっとりとした汗が含まれていたような…そんな気がした。